第0講

ヒント — これだけ知れば指示できる

確認の一行がすべてだ。

ターミナルで以下を打つ。

claude --version

2.1.x のようなバージョン番号が表示されれば — 本物のClaude Codeだ。このコースの第1講から第11講まで全部動く。

コマンドが見つからないと表示される場合、または今使っているのが Cursor・Antigravity・Windsurf のチャット欄 であれば — それはClaude Codeではない。同じClaudeモデルを使っていても、別のプログラムだ。このコースの自律走行はそこでは動かない。

覚える一文:

エージェント ≠ モデル。 同じOpusを使っても、動かすプログラムが違えば能力が違う。

インストール一行(Mac / Ubuntu / WSL):

curl -fsSL https://claude.ai/install.sh | bash

Windowsは WSL またはDockerが先だ。以下の本文で扱う。


体験してみよう

同じ作業をさせて、CLIとIDEチャットの違いを目で確認する。3分で終わる。

Claude Code(CLI)で:

「空のフォルダにhello.pyを作って。わざと文法エラーを一つ入れて、実行してエラーを確認してから、自分で直してもう一度実行して。‘Hello’が出力されるまで。」

CLIのClaude Codeは — ファイルを作り、自分で実行し、エラーを読み、直し、また動かす。毎ステップあなたに確認を求めない。 自律ループが回る。

同じ文をIDEの拡張チャット(Cursor/Antigravity/Windsurfのチャット欄)に入れると — コードは提案するが、実行はあなたがボタンを押さなければならず、エラーを再びコピーして貼り付けなければならず、毎ステップ承認を待つ。ループが人間を経由しないと閉じない。

この違いが第0講のすべてだ。そしてこのコース全体が 前者 を前提に設計されている。


なぜこう指示すべきなのか

あなたはおそらくすでに「Claude Code」で何かを作った経験があるだろう。YouTubeの講座を見て、チャット欄に話しかけ、コードが出てくるのを見た。

しかし一つ聞きたい。あなたが使ったそれは、本当にClaude Codeだったのか?

この問いが些細に見えるなら、実際のオンボーディング現場の話を聞いてほしい。

エージェント ≠ モデル

あるユーザーがvibe codingで作ったアプリが壊れて助けを求めてきた。「Claude Codeで開発中」と言っていた。数日間迷い続けた。言った通りにならず、AIが岐路に立つたびに「A案・B案・C案のどれにしますか?」と聞き返して進まなかった。

原因は彼の判断力ではなかった。彼が使っていたのは Antigravity IDE拡張のClaudeチャット だった。CLI Claude Codeではなかった。どちらもClaude Opusモデルを使う。モデルは同じだ。それなのに結果はまったく違った。

なぜ? モデルが同じでもエージェントが違うからだ。

  • モデル(Model): OpusやSonnetのような頭脳。文を読み書きする能力そのもの。
  • エージェント(Agent): その頭脳を動かすプログラム。どんなシステムプロンプトを与えるか、どんなツール(ファイル読み書き/コマンド実行)を持たせるか、人間の承認なしにどこまで自分でやるか — すべてエージェントが決める。

同じ馬(モデル)でも、手綱なしに野原に放つか、鞍と馬具をつけて騎手が乗るかによって、行ける場所が違う。エージェントがまさにその鞍と馬具だ — 手綱(reins)をかけられるようにする装置。(第5講でまた会う。)

単純チャットモード(IDE拡張など)CLI自律エージェント(Claude Code)
モデルClaude(同じ)Claude(同じ)
ファイルアクセス限定的・手動Read/Write/Edit 自動
コマンド実行ほぼ不可Bashで直接実行
外部CLIツール実行(yongolhurlなど)不可可能
自律進行毎ステップ承認自分でループ
サブエージェント手動自動生成

だから中途半端なエージェントではだめだ — なぜこのレベルのエージェントなのか

エージェントにはレベルがある。そしてこのコース(第1講〜第11講)が求めるレベルは、一つの基準で分かれる。

このコースの核心は一文だ。

AIがコードを書き、機械が検証し、あなたは「通過した?」とだけ確認する。

これが動くには、AIが 自分で 検証ツールを実行し、その結果を読んで次の行動を決めなければならない。yongol validateを動かしてエラーを読み、直し、また動かすループ — これを人間が毎回仲介すれば、自律ではなく労働だ。

自律ループ可能:
  AIがvalidate実行 → エラー読む → 修正 → 再度validate → 通過 → 次へ
  (人間介入0回)

毎ステップ人間が仲介:
  AIが「validateをこう実行してください」→ 人間がコピー・実行 →
  結果を人間がコピー → AIに貼り付け → AI修正案 → 人間がまた実行...

第3講Hurl、第4講yongol、第6講tsma、第8講filefunc — すべてCLIツールだ。AIが自律で動かしてこそ意味がある。このループを回せないエージェントでは、このコースの半分が機能しない。

だから「中途半端なエージェント」の基準はブランドではなく、この一問だ:

このエージェントがyongol validate / hurl / tsma自分で 実行し、結果を読んで次の行動を決めるか? それとも毎ステップ私がコピー・承認を仲介しなければならないか?

  • 前者なら — reinsをかけられるエージェントだ。(CLI Claude Codeがここに該当する。)
  • 後者なら — 中途半端なエージェントだ。モデルがいくら賢くても、このコースでは詰まる。

注意:「IDE拡張 = 絶対NG」ではない。 Cursor・Windsurfの エージェントモード のようにコマンドを自律実行してループを回すものもある。逆に同じ製品の中の単純チャットモードは毎ステップ人間を経由する。製品名ではなく 上の基準 で判断せよ。実際のオンボーディング現場で詰まったのも「IDEだから」ではなく、使っていたチャットモードがCLIループを自律で回せなかったからだ。

だから第0講が講の入口だ。 ツールを間違えると、第1講から第11講までがすべて嘘になる。

YouTubeの罠

問題はこれだ。YouTubeやコミュニティのvibe codingの講座のほとんどが、自律ループを回すエージェントと単純チャットモードを 区別せず どちらも「Claude Code」と呼ぶ。

だから初心者には違いを知る方法がない。チャット欄に話しかけながら「自分はClaude Codeを使っている」と信じる。そして講座通りにならない理由を自分のせいにする。

違う。ツールを間違えたのだ。正確には、YouTubeがツールを間違えて教えたのだ。 上の一つの基準 — 「自分でCLIを動かすか」 — さえ持っていれば、この罠にはまらない。

Claude Codeのインストール

このコースはUbuntu(またはWSL)環境を基準とする。Macユーザーもほぼ同じだ。

事前準備

  1. Anthropicアカウント: https://console.anthropic.com で登録
  2. サブスクリプションプラン: Claude Pro(月20ドル)、Max(月100ドルまたは月200ドル)から選択。Maxは使用量制限が余裕がある
  3. Ubuntu / Mac / WSL またはDocker: Windowsユーザーは以下の二つのルートから一つを選ぶ

Mac・Ubuntu・WSL内で — ネイティブインストール(推奨)

Node.jsが不要な最もシンプルな方法だ。

curl -fsSL https://claude.ai/install.sh | bash

インストールが終わったら確認する。

claude --version

2.1.x のようなバージョン番号が表示されれば成功だ。

Windows Aプラン:WSL(推奨)

Windows PowerShellを管理者権限で開いて実行する。

wsl --install

この一行がWSLの有効化、Linuxカーネルのダウンロード、Ubuntuのインストールをすべて処理する。再起動後にUbuntuが開いてユーザー名とパスワードを聞いてくる。小文字の短い名前を入力する。

注意: 以降のすべての作業はUbuntuターミナル内で行う。PowerShellやCMDでClaude Codeをインストールすると「Windows is not supported」エラーが出る。

その後、上のネイティブインストール一行をUbuntu内で実行する。

WSLのヒント: プロジェクトは必ずLinuxファイルシステム(/home/ユーザー名/)に置く。Windows側(/mnt/c/)に置くとファイル読み取りが極端に遅くなる。

Windows Bプラン:Docker(WSLが使えない場合)

会社のポリシーや環境の問題でWSLが使えない場合、DockerでLinuxコンテナを立ち上げ、その中でClaude Codeを使う。

# プロジェクトフォルダで、ubuntuコンテナを立ち上げて現在のフォルダをマウント
docker run -it -v "$(pwd)":/work -w /work ubuntu:24.04 bash

# コンテナ内で
apt update && apt install -y curl
curl -fsSL https://claude.ai/install.sh | bash
claude --version

-v "$(pwd)":/work があなたのプロジェクトフォルダをコンテナ内の /work につなぐ。コンテナ内で作業した結果がそのままあなたのフォルダに残る。

補足方法:npmでインストール

すでにNode.jsの経験がある人向けの方法だ。初めての場合は上のネイティブインストールを使う。

# nvmインストール後にNode.js LTS
curl -o- https://raw.githubusercontent.com/nvm-sh/nvm/v0.40.3/install.sh | bash
source ~/.bashrc
nvm install --lts

# Claude Codeインストール
npm install -g @anthropic-ai/claude-code

注意: sudo npm install -g は使わない。権限問題とセキュリティリスクが生じる。

初回実行と認証

# プロジェクトフォルダへ移動(なければ作る)
mkdir -p ~/projects/my-first-app
cd ~/projects/my-first-app

# Claude Code実行
claude

初回実行時にブラウザが開いてAnthropicへのログインを求める。ログインすると認証完了で、次回以降は自動接続される。

インストール確認チェックリスト

この三つがすべてチェックできれば、第1講へ進む準備ができている。

  • claude --version2.1.x のバージョン番号を出力するか
  • claude を実行するとプロンプト(対話画面)が表示されるか
  • ブラウザログインで認証が完了したか
  • 上の体験で、AIが 自分で ファイルを作り実行して直したか(毎ステップ承認を求めなかったか)

最後の項目が最も重要だ。AIが自分でコマンドを実行してエラーを直したなら — あなたは本物のClaude Codeを使っている。

IDE拡張はあくまで補助として

Cursor、Antigravity、Windsurfが悪いツールという意味ではない。コードを目で見ながら一行ずつ直すのには優れている。プログラマーにとっては良いツールだ。

ただしこのコースの 自律走行はCLIで行う。 IDE拡張はコードを覗く補助画面として使い、「作って検証して固定する」ループはClaude Code CLIに任せる。両方を使いつつ、役割を区別する。


実習:本物を確認する

目標: 自分が使っているのがCLI Claude Codeであることを確認し、自律ループを一度回してみる。

ステップ1 — インストール確認

claude --version

バージョンが 2.1.x と表示されるか確認する。表示されなければ上のインストール手順に戻る。Windowsの場合はWSL(Aプラン)またはDocker(Bプラン)のいずれかを先にセットアップする。

ステップ2 — 自律ループを観察する

claude を実行して空のフォルダで指示する:

空のフォルダにhello.pyを作って。わざと文法エラーを一つ入れて、
実行してエラーを確認してから、自分で直してもう一度実行して。
"Hello"が出力されるまで。

観察すること:

  • AIがファイルを直接作るか?(あなたがコードをコピー・貼り付けしないか)
  • AIが python hello.py を直接実行するか?
  • エラーが出たらAIが自分で読んで直すか?
  • この一連の過程であなたがやったことは最初の一文と(必要に応じて)実行承認だけか?

すべて「そうだ」であれば — あなたはゲートを通過した。第1講へ進む。

(IDEチャットを使っていた場合) 同じ文をIDEチャット欄にも入れてみて、どこで詰まるかを直接比べてみる。この差を一度体感すれば、なぜ第0講が必要なのか生涯忘れない。


まとめ

  1. エージェント ≠ モデル。 同じClaudeモデルでも、動かすプログラム(エージェント)が違えば能力がまったく違う。
  2. YouTubeが「Claude Code」と呼ぶものの多くは、自律ループを回せない単純チャットモードだ。 判別基準はブランドではなく「自分でCLIを動かすか」だ。
  3. このコースはCLIを前提に設計されている。 第3講Hurl、第4講yongol、第6講tsma、第8講filefunc — すべてAIが自律で実行してこそ意味のあるCLIツールだ。
  4. インストールは一行。 curl -fsSL https://claude.ai/install.sh | bash。Windowsは WSLまたはDockerが先。
  5. ゲート通過基準: claude --version2.1.x を返し、AIが自分でファイルを作り実行して直す。

ツールを間違えると、次の11講がすべて嘘になる。講の入口をここで塞いだ。

次講予告:「AIへの指示の仕方。」 本物のClaude Codeを手に入れたので、コードを知らない人がAIに何を、どう指示するかを学ぶ。


課題

  1. 自分のツールの正体確認: これまで「Claude Code」と信じて使っていたものがCLIなのかIDEチャットなのかを確認する。claude --version が答えだ。
  2. 自律ループを一度回す: 上の実習のhello.py課題を最後まで回して、AIが人間介入なしに何ステップを自分で処理したかを数える。
  3. (Windowsユーザー)環境を決める: WSLとDockerのうち自分の環境で動く方を一つ選んでセットアップを終える。

関連記事

参考資料(外部)

  • Agent Harness Engineering — Addy Osmani. 「まずまずのモデル+優れたハーネスは、優れたモデル+悪いハーネスに勝る。」モデルを固定してハーネスだけ変えたらベンチマーク順位が逆転した事例。エージェント ≠ モデル の決定版。
  • Agents are models using tools in a loop — Simon Willison. エージェントの標準的な定義。ツールの結果がモデルにフィードバックされる「loop」が、本物のエージェントとマーケティング用語を分ける。
  • Which AI Coding Harness Actually Works Without You? — Paweł Józefiak. コーディングツールをOrchestrator(自律)/ Pair Programmer(段階的指示)/ Supervised IDE(単独判断拒否)の三区分で分類。この三つを混同することが核心的な間違い — 第0講の「YouTubeの罠」とまったく一致する。

Reins Engineering 全講義

タイトル
第0講Claude Codeのインストール
第1講AIへの指示の仕方
第2講AIを信じない方法
第3講壊れないアプリ
第4講決定をコードの外へ
第5講手綱のあるAI
第6講通過したら固定する
第7講おべっかを逆手に
第8講エージェントの工場
第9講コードを超えた自動化
第10講データの法
第11講失敗したvibe codingを救う方法

根拠資料

  • Anthropic. “Claude Code overview.” Anthropic Documentation. link
  • Anthropic. “Set up Claude Code.” Anthropic Documentation. link
  • Karpathy, A. (2025). “Vibe coding” — コードを読まずに感覚でコーディングするという言葉の起源。